家族信託契約により、信託した財産は受託者へ移転されたことになります。しかし、税法では信託の実質に注目し、実質の所得者となる受益者に所得税を課税する受益者等課税信託の原則が適用されます。
家族信託の設計で一番多いのは委託者兼受益者とする自益信託ですから、委託者兼受益者である親は、信託不動産所得について課税を負担することになります。
そして確定申告の際、その信託不動産から生じた赤字について、損益通算して計算できるか?の疑問ですが、、
租税回避防止規程により、一つの信託契約から生じた損失が不動産所得の損失であるときは、不動産所得の計算上、その損失はなかったものとされます。
したがって、家族信託から生じた不動産所得の損失は、当該家族信託契約以外の所得(不動産・金融資産等)と相殺することができません。
しかし、損失が生じた当該家族信託契約の内においては、損益通算することができます。当該信託契約財産である他の不動産や金融資産の収益となら損益通算できるということです。
こういった事情から、どの不動産を当該信託契約の信託財産として組み入れるのかを、家族信託を設計するときに慎重に検討する必要があります。
ホームズ家族信託法務事務所 コンサルタント・行政書士 川上 徹
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